S.M.A.R.T.(スマート)とはHDDやSSDの状態を記録装置自体が自己診断する機能です。HDDは消耗品であり、精密機器であるためいずれ故障が発生するものとして取り扱う必要があります。いったん故障してしまうと記録されていたデータが失われるリスクがあります。そのため、定期的にバックアップをとり、ある程度使用したら交換することが望まれます。
SMART情報はHDDの故障状態を把握するためには有効な機能ですので、うまく活用すればHDDの故障を未然に把握したり、適切な交換タイミングを把握できます。
WindowsをはじめとするOSはSMART情報を表示する機能がないため、SMART情報を調べるには専用のSMART情報取得ソフトが必要です。スマート情報を調べるソフトはフリーソフトをはじめネット上で簡単に入手可能です。フリーソフトであれば以下のようなものがあります。
SMART情報は各項目につき「現在値(Value)」「最悪値(Worst)」「閾値(Threshold)」「生の値(Data/Raw value)」で表示されます。各々の意味と見方は以下の通りです。
各項目の現在の状態が数値で表されます。この数値が現在値(Value)で、常に変動しています。現在値・最悪値が後述の閾値(Threshold)を下回ると故障が疑われます。
過去に計測した値の内、最も悪化状態にある数値が最悪値(Worst)として表示されます。
閾値(Threshold)はメーカーが定める限界値であり、この数値が正常・故障のボーダーラインとなります。現在値・最悪値が閾値を下回ると故障が疑われます。
SMART情報のリアルタイムデータであり、16進数で表示されます。専門的な故障診断には重要な数値でありますが、簡易的な診断においてはあまり重要ではないので無視しても構いません。
SMART情報には様々な情報が記載されていますが、HDDの状態診断で特に注目すべきなのは以下の項目です。これらの項目の現在値・最悪値が閾値を下回っている場合は故障が疑われますので、速やかにバックアップを取りHDDを交換することをお勧めします。
「リードエラーレート」はデータ読み込み時にエラーが発生した数値です。項目IDは01となります。読み込み不良はディスクやヘッドなどの故障が疑われます。ただし、正常状態でもある程度はリードエラーが発生する場合もあるため、閾値を下回らない場合は正常であると判断しても構いません。
「代替処理済みのセクタ数」はデータが保存されている領域(=セクタ)が不良であり、別の領域に再度割り当てられたセクタ数を表します。項目IDは05です。この数値は故障診断において重要であり、現在値・最悪値が閾値を下回っている場合は速やかにHDD交換をすることをお勧めします。
「シークエラーレート」はHDD内部の磁気ヘッドに関する情報であり、磁気ヘッドの移動(シーク)時にエラーが発生した数値が記録されます。項目IDは07です。シークエラーレートが閾値を下回っている場合、ヘッド関連の故障が疑われます。
「代替処理保留中のセクタ数」は、不良セクタとして代替処理がされる可能性のある領域を示します。項目IDはC5です。言い換えれば、まもなく不良セクタ化される半故障状態であり、故障診断においては「代替処理済みセクタ数」と同じく重要な項目です。
「回復不可能なセクタ数」はオフライン時におけるスキャンにより回復不可能と判断されたセクタ数を表示します。項目IDはC6です。回復不可能なセクタはデータ保存・読み込みができない領域であり、この数値が増えることはHDD故障が疑われるため速やかなバックアップと交換が必要です。
SMART情報はHDDやSSDなどの記録装置の故障診断を行うには便利な機能ですが、この情報だけに頼り故障診断を行うことは危険です。何故なら、HDDやSSDの故障は前兆がないまま突然発生することも多くあり、つい最近までSMART上では正常であったのにデータが消失してしまうリスクがあるからです。日ごろのバックアップと定期的な交換がデータ消失リスクを低減させます。
万一、HDDやSSDなどの故障により記録データが回収できなくなった場合、データ復旧サービスによるデータ救出をご検討ください。