SSDやSDカード・USBメモリは静電気に非常に弱い記憶装置です。冬場は乾燥しやすいため静電気によるメモリ基盤故障が増加しやすい時期ですので注意が必要です。
「静電気程度の小さい電力ではメモリは故障しないだろう」
といった慢心は禁物です。静電気は人体にとっては少しの痛みを伴う程度のものですが、メモリ記憶装置にとっては破壊的な電力となります。
電撃を感じる静電気は電圧で2000V~3000V程度、電流値で1mA以上といわれています。一方、フラッシュメモリなどのCMOS電源回路電圧は一般的に1.8V~15V、静止時電流値は10μA~200μAです。1mA=1,000μAですので、静電気の電力はメモリ動作に対し電圧値で1,100倍以上、電流値で100倍以上となります。このような過電圧・過電流はメモリ半導体の回路をショートさせ、一瞬で破壊されてしまうリスクが高いです。最近の電子機器は静電気対策が施されているケースがありますが、それでも油断はできません。
フラッシュメモリは半導体であり、その主流回路であるCMOSは非常に精密な構造をしているためショート故障が発生するとデータ復旧は非常に困難です。通常、ショート故障の場合は顕微鏡や導通確認装置でショート位置を特定し、マイクロワイヤを接続することで導通ラインを確保・修理します。しかし、半導体内部となるとそもそも分解が困難だからです。そのため、フラッシュメモリにおいては故障予防が最も重要といえます。
静電気を防ぐ簡単な方法は、記憶装置を触る前に一旦鉄柱やドアノブに触れ、体内に帯電している電気を放出させることです。そうするだけで静電気故障のリスクが大幅に防げます。また、パソコンの分解作業の際は以下のような帯電防止リストストラップを使用することをおすすめします。
使用方法はリスト部分を腕につけ、ワニ口部分をパソコンケースの鉄部分(非塗装部分)につけます。そうすることで体内とパソコンボディが電位的に同位となり静電気発生を防ぐことができます。他にも常に体内の静電気を放電させるブレスレットなども販売されてますのでそういったアイテムを利用することをおすすめします。
繰り返しますが、フラッシュメモリにおいては静電気故障を起こした場合のデータ復元が困難ですので、故障させないという予防姿勢が大切です。万一、静電気が原因でメディアが認識されないなどの故障が疑われる場合は、不用意に電源を付けるなどの操作を行うことは禁物です。症状悪化によりデータ復旧成功率が低下するからです。
故障が疑われる場合は速やかに通電を止め、専門のデータ復旧技術者に相談されることをお勧めします。