データ復旧における「異音」とは主にHDDの動作音が異常にある状態・症状を言います。HDDの構造はレコードと似ており、ディスクプラッタがスピンドルモーターで高速回転し、それを磁気ヘッド装置が読み書き動作する仕組みです。物理的な駆動メディアですので、当然音が発生します。
最近のHDDは静音タイプが多く、また外付けハードディスクのケースには動作音を軽減させるクッションが設置していることもあり、耳を澄まさなければ音にすら気づかないタイプもあります。
しかし、通常時と明らかに異なる音がした場合、HDDの動作異常が発生しており、多くの場合は重度物理障害と判断できる状態となります。
異音のタイプは様々ありますが、以下のようなタイプがあります。
このケースはウェスタンデジタル製やSeagate製など、各メーカーでよく発生する異音タイプです。不規則ではなく、規則的にカチッカチッと異音がする場合、多くはHDD起動直後に発生します。
HDDが起動していないときは磁気ヘッドは「ランプレール」と呼ばれる退避機構に存在しています。電源が入り、モーターが規定回転数に達するとヘッドはプラッタ上の起動情報を読み込むために動作を開始しますが、ファームウェア障害やプラッタスクラッチなど何らかの障害で読み込みができない場合、ヘッドは速やかにランプレールに退避します。その時に「カチッ」と音が鳴ります。この動作を繰り返すことで規則的な異音が発生するのです。
「ジー」と継続的な異音がする場合、モーター軸またはヘッド損傷によるプラッタとの接触が考えられます。特に後者の場合、プラッタスクラッチ(傷)が広範囲に広がる可能性が高く、危険な異音と言えます。
主にSeagate製のHDDにおいて発生する異音で、電子機器のビープ音のような「ビー」という音がするケースがあります。この原因は様々ありますが、ヘッドアセンブリの振動による高周波音のケースが多いです。原因はヘッド異常やプラッタ接触などであり、重大な故障となっているケースが殆どです。
異音が発生した場合は、「速やかに電源を切り、一切の動作を中止する」が大切です。異音が発生した場合、運よくまだデータアクセスができたとしても急激に障害が悪化するパターンが殆どです。多くの場合、異音発生後は何度起動してもハードディスクが認識されなくなります。
この状況下ではデータ復元ソフトなどのソフトウェアでは解決することができません。むしろ、そのようなソフトを使用した場合、無理やりHDDを読み込もうとするので障害悪化の危険が極めて高くなります。
異音が発生した場合は、まず発生原因を特定し、物理的な解決法を模索する必要があります。それには専門的な技術と設備が必要であり、技術者ではない方々が手に負えるレベルから逸脱しています。
異音発生時はまずは落ち着き、電源を切り、速やかにデータ復旧技術者に相談されることをおすすめします。